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ダイエットサプリのビフォーアフター写真、4つの違法パターンを消費者庁事例で読み解く

痩身・美容広告で多用されるビフォーアフター写真。撮影条件・加工・体験談の使い方次第で景表法違反となる4類型を、措置命令事例と条文から具体的に解説。

公開: 2026-05-25更新: 2026/5/25
ダイエットサプリのビフォーアフター写真、4つの違法パターンを消費者庁事例で読み解く

はじめに:あの「劇的変化」、本当ですか?

SNSのタイムラインや動画広告を眺めていると、ふと目に飛び込んでくる光景がある。

左に「使用前」、右に「使用後」。

くびれの出た脇腹。シャープになったフェイスライン。密度を取り戻した頭髪——。

え、これ本当に変わったの?

そう思いつつも、心のどこかで「自分も試してみたい」という気持ちが芽生える。広告主の狙いは、まさにそこにある。

しかし、こうしたビフォーアフター写真の多くには、広告には書かれていない前提が隠れている。撮影条件、画像加工、体験者の属性——。

消費者庁は近年、痩身・美容・育毛分野でビフォーアフター表示を含む広告に対して相次いで措置命令を出しており、景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)の典型例として扱われている。

本コラムでは、ビフォーアフター写真が景表法違反と判断される代表的な4パターンを、公開事例と条文に沿って整理する。広告を「鵜呑みにしない目」を持つことが、不要な高額商品の購入を避ける最大の防御策になる。


そもそも、写真は「表示」なのか?

ビフォーアフター写真は、商品の効果を視覚的に訴える「効果効能表示」の一種として扱われる。

文章で「2週間で-5kg」と書くのと、写真2枚を並べて同じ印象を与えるのとでは、景品表示法上の評価は変わらない。

景品表示法第5条第1号が禁じるもの

商品・サービスの内容について「実際のもの」または「事実に相違して競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示」で、不当に顧客を誘引するもの

つまり——

写真であっても「表示」に該当する。

撮影条件・加工・選別の仕方によっては優良誤認となる。

「不実証広告規制」という強力な武器

さらに消費者庁は2003年から「不実証広告規制」(景表法第7条第2項)を運用している。

効果を示す合理的根拠資料を15日以内に提出できない場合、その表示は優良誤認とみなされる。

ビフォーアフター写真は「合理的根拠」として認められるためのハードルが高く、写真1枚で済ませた事業者が措置命令を受ける構図が繰り返されている。

<div class="callout-tip"> <div class="callout-title">ポイント</div>

「写真は嘘をつかない」は通用しない。

撮影条件・選別・加工のいずれかに恣意が入った時点で、景表法違反のリスクが立ち上がる。

</div>

パターン①「撮影条件のすり替え」

最も多いのが、同じ人物を異なる条件で撮影し、あたかも商品の効果であるかのように見せるパターンだ。

具体的な「演出」の例

  • ビフォーは脱力した姿勢・正面光、アフターは腹に力を入れ斜め上からの光
  • ビフォーは食後・むくみがある朝、アフターは絶食状態・運動直後
  • ビフォーは無加工服装、アフターは黒の引き締めウェア

こうした「写し方の違い」によって生じた印象差を、商品の効果として表示すれば優良誤認に当たり得る。

消費者庁が過去に措置命令を出した痩身関連商品の事案でも、合理的根拠資料の提出を求められた事業者が、撮影条件の同一性を立証できず違反認定された例が複数公表されている。

医薬品・化粧品なら、もっと厳しい

医薬品・医療機器・化粧品の広告については、厚生労働省「医薬品等適正広告基準」第3の第10項で

使用前後の写真を用いた効能効果の保証表現が禁止

されている点も押さえておきたい。

健康食品でも、痩身効果を写真で示せば薬機法第68条(承認前医薬品の広告禁止)に抵触する可能性が出てくる。


パターン②「加工・合成」

2つ目のパターンは画像加工である。

スマートフォンの普及で誰でも体型補正アプリを使える時代になり、広告画像のレタッチは一般化した。

しかし——

効果効能を訴求する文脈で行う加工は、景品表示法上の評価が厳しくなる。

問題となる加工の例

加工の種類内容
部分修正ウエストを部分的に細く修正する液状ツール
色味変更肌のトーンを変えて「透明感が増した」ように見せる
描き足し髪のボリュームをブラシツールで描き足す
別人合成別人の身体パーツを合成する

消費者庁は2022年以降、ステルスマーケティングを含む不当表示への監視を強化しており、2023年10月施行のいわゆる「ステマ告示」とあわせ、加工写真を効果実例として提示する手法への目線は厳しい

<div class="callout-warn"> <div class="callout-title">見破りのヒント</div>

ビフォーとアフターで、こんな違和感がないか?

  • 背景の壁紙・タイル目地・コンセント位置がズレている
  • 身体の輪郭線だけ不自然に滑らかになっている

スマホで拡大して背景を見るだけで違和感が掴めることがある。

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パターン③「個人差を打ち消す但し書き」

極端な成功例だけを並べ、画面の隅に小さく書き添えるアレ——

※効果には個人差があります

これ、実は法的にほとんど機能しないのをご存じだろうか。

消費者庁の明確な立場

消費者庁「打消し表示に関する実態調査報告書」では、

本体の表示が強調的である場合、小さな注記では一般消費者の誤認を打ち消せない

という考え方が明確に示されている。

「個人の感想です」「効果を保証するものではありません」を添えても、ビフォーアフターの強烈な視覚情報の前では機能しない——これが行政の立場である。


パターン④「体験者の選別」

そもそも体験者が一般消費者ではないケース。これも見落としがちな違反パターンだ。

「体験者」の正体

  • モニター
  • 社員
  • 運動指導者
  • 管理栄養士

体験者がトレーナーや管理栄養士など、もともと体型管理の専門家であった場合、商品単独の効果なのか、本人の専門知識による生活習慣改善の効果なのかが切り分けられない。

にもかかわらず、

「飲むだけ」 「貼るだけ」

で痩せたかのように表示すれば、優良誤認の評価対象となる。

課徴金の規模感

過去には、酵素飲料・着圧インナー・脂肪燃焼サプリなどの分野で、合理的根拠資料の提出が不十分として課徴金納付命令(景表法第8条)が出された事案が消費者庁から公表されている。

課徴金は**対象期間中の売上額の3%**という規模で、事業者にとって決して軽い処分ではない。


信じて買ってしまったら、どう動くか?

「もしかして、私が買ったあの商品も……」

そう気づいた時、何をすればいいか。

Step 1: 証拠を固める

広告画像・動画は時間とともに差し替えられる。

気づいた時点で、以下を必ず保存してほしい。

  • 購入のきっかけになった広告のスクリーンショット
  • 広告のURL・閲覧日時
  • 注文確認メール
  • 商品到着時の同梱書面
  • 決済明細

Step 2: 相談窓口を使う

窓口用途
消費者ホットライン188最寄りの消費生活センターへ。広告の問題点と契約解除の可否を一括相談
消費者庁「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」措置命令につながる端緒情報として活用される
クレジットカード会社のチャージバック申請広告内容と実際の商品が著しく異なる場合、交渉材料になる
国民生活センター越境消費者センター(CCJ)販売者が海外事業者の場合

Step 3: 法的根拠を知っておく

通信販売には特定商取引法上のクーリング・オフ制度が原則として適用されない

しかし、

  • 特定商取引法第15条の3に基づく「契約解除権
  • 誤認させる表示があった場合の取消し(同法第15条の4)

など、消費者側に使える条文は存在する。

一人で判断せず、188に電話を入れて整理してもらうのが最短ルートになる。

<div class="callout-tip"> <div class="callout-title">まず動くなら、この3点</div>
  1. 広告のスクショ
  2. 注文画面
  3. 決済明細

これをPDFか画像で保存してから188に電話する。

相談員が状況を把握する時間が、大幅に短縮される。

</div>

おわりに:広告を疑うことは、誠実な事業者を選び取る行為

ビフォーアフター写真は、見る側の「変わりたい」という気持ちを直接刺激する強力な装置である。

だからこそ——

✅ 撮影条件 ✅ 加工 ✅ 但し書き ✅ 体験者属性

この4つの観点で一歩立ち止まる習慣が、結果的に家計と健康を守ることにつながる。

広告を疑うことは、広告を出している誠実な事業者を選び取る行為でもある。

「劇的な変化」を約束する写真ほど、その裏側にある条件設定を確認したい。


※本コラムは法律相談・医療相談の代替となるものではない。具体的なトラブルや健康被害がある場合は、消費生活センター(188)、弁護士、医療機関への相談を優先してほしい。


出典