クスリノコンパス

2027年3月から、病院の薬の一部に「上乗せ料金」が始まります

自分の薬は対象?調べる
安全情報

高齢者が市販薬を使う前に知っておきたい注意点|腎機能・認知機能への影響を解説

高齢者は加齢による身体機能の変化から、市販薬による副作用リスクが高まります。特に注意すべき成分と安全な使い方のポイントを薬剤師が解説します。

公開: 2026-09-18更新: 2026/9/18

はじめに|なぜ高齢者は市販薬に注意が必要なのか

市販薬(OTC医薬品)は手軽に購入できる便利な存在です。しかし、高齢者が使用する際には若い世代とは異なる注意が必要になります。加齢に伴い、薬を分解・排泄する機能が低下するためです。

厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者における薬の副作用報告は年々増加傾向にあります。市販薬であっても「安全」と過信せず、正しい知識を持って使用することが大切です。

⚠️ 市販薬でも副作用は起こる

「市販されているから安心」ではありません。特に高齢者は副作用が重症化しやすいため、症状が改善しない場合は早めに医療機関を受診しましょう。

高齢者の身体で起きている変化

腎機能の低下

腎臓は体内の老廃物や薬の成分を尿として排泄する重要な臓器です。加齢により腎機能は徐々に低下し、70歳代では20歳代と比較して約50%程度まで機能が落ちるとされています。

腎機能が低下すると、薬の成分が体内に長く留まりやすくなります。その結果、通常の用量でも効きすぎたり、副作用が出やすくなったりします。

肝機能の低下

肝臓は薬を分解(代謝)する働きを担っています。高齢になると肝臓の血流量が減少し、薬の分解速度が遅くなります。これにより、薬の血中濃度が予想以上に高くなることがあります。

体内水分量と体脂肪率の変化

高齢者は体内の水分量が減少し、体脂肪の割合が増加します。水溶性の薬は血中濃度が上がりやすく、脂溶性の薬は体内に蓄積しやすくなるという特徴があります。

身体の変化薬への影響起こりやすい問題
腎機能低下排泄が遅くなる薬が体内に蓄積、副作用増加
肝機能低下分解が遅くなる血中濃度が上昇しやすい
水分量減少水溶性薬物の濃度上昇効きすぎ、副作用
体脂肪増加脂溶性薬物の蓄積作用の遷延、眠気持続

腎機能に影響を与えやすい市販薬

解熱鎮痛薬(NSAIDs)

イブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、腎臓への血流を減少させる作用があります。健康な方では問題になりにくいですが、もともと腎機能が低下している高齢者では急性腎障害を引き起こす可能性があります。

特に以下の状況では注意が必要です。

  • 脱水状態のとき
  • 利尿薬や降圧薬を服用中のとき
  • 慢性腎臓病(CKD)と診断されているとき

🚨 解熱鎮痛薬と脱水の組み合わせは危険

夏場の発熱時に十分な水分補給をせずNSAIDsを服用すると、腎機能が急激に悪化することがあります。こまめな水分摂取を心がけてください。

胃腸薬に含まれる制酸剤

マグネシウムやアルミニウムを含む制酸剤は、腎機能が低下していると体内に蓄積しやすくなります。マグネシウムの蓄積は下痢や倦怠感、重症化すると不整脈の原因になることがあります。

比較的安全な選択肢

成分腎機能への影響高齢者への推奨度
アセトアミノフェン比較的少ない推奨される
イブプロフェン影響あり短期間なら可(要注意)
ロキソプロフェン影響あり短期間なら可(要注意)
アスピリン影響あり慎重に使用

解熱鎮痛目的であれば、アセトアミノフェン(カロナールなど)が腎機能への影響が比較的少なく、高齢者にも使いやすい成分とされています。

認知機能に影響を与えやすい市販薬

抗ヒスタミン薬(第一世代)

風邪薬やアレルギー薬に含まれる第一世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど)は、脳内に移行して眠気やふらつきを引き起こします。高齢者では、これらの症状がより強く出やすく、転倒リスクが高まります。

さらに問題となるのが「抗コリン作用」です。抗コリン作用を持つ薬は、認知機能の低下やせん妄(急性の意識障害)を引き起こす可能性があります。

💡 第二世代抗ヒスタミン薬を選ぶ

アレルギー症状には、脳への移行が少ない第二世代抗ヒスタミン薬(フェキソフェナジン、ロラタジンなど)を選ぶと、眠気や認知機能への影響を軽減できます。

抗コリン作用を持つ成分一覧

市販薬に含まれる抗コリン作用を持つ主な成分は以下の通りです。

薬の種類抗コリン作用を持つ成分起こりやすい症状
風邪薬・鼻炎薬ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン眠気、口渇、便秘、認知機能低下
睡眠改善薬ジフェンヒドラミン翌日への持ち越し、ふらつき
乗り物酔い止めスコポラミン、ジフェンヒドラミン眠気、視力調節障害
胃腸薬ブチルスコポラミン口渇、便秘、排尿困難

睡眠改善薬の注意点

市販の睡眠改善薬の多くはジフェンヒドラミンを主成分としています。高齢者が使用すると、翌朝までふらつきが残ったり、夜間のトイレで転倒したりするリスクがあります。

不眠が続く場合は、市販薬で対処し続けるのではなく、医療機関で相談することをお勧めします。

高齢者が市販薬を安全に使うための5つのポイント

1. お薬手帳を活用する

市販薬を購入した際も、お薬手帳に記録しておきましょう。医療機関を受診した際に、飲み合わせの確認がしやすくなります。

2. 添付文書の「してはいけないこと」を必ず確認する

市販薬のパッケージや添付文書には「次の人は服用しないでください」という記載があります。腎臓病や緑内障、前立腺肥大症などが該当する場合は特に注意が必要です。

3. 少ない用量から始める

年齢による用量調整の記載がない場合でも、高齢者は少なめの用量から様子を見ることが推奨されます。効果が不十分な場合に徐々に増やす方が安全です。

4. 長期連用を避ける

市販薬は一時的な症状緩和を目的としています。漫然と使い続けることで、副作用リスクが高まったり、重大な病気を見逃したりする可能性があります。

5. 薬剤師に相談する

購入前に薬剤師へ相談することで、現在服用中の薬との相互作用や、年齢・持病を考慮した適切な薬を選んでもらえます。

家族や介護者が気をつけたいこと

高齢者本人だけでなく、家族や介護者の目配りも重要です。以下のような変化が見られた場合は、市販薬の影響を疑って医療機関に相談してください。

  • 急にぼんやりすることが増えた
  • 夜間のトイレ回数が極端に増えた、または減った
  • ふらつきや転倒が増えた
  • 食欲低下や吐き気が続く
  • 顔や手足のむくみ

⚠️ 「いつもと違う」を見逃さない

高齢者の体調変化は薬の副作用である可能性があります。新しく市販薬を使い始めた後に異変を感じたら、使用を中止して医療機関を受診しましょう。

医療機関を受診すべきタイミング

以下の場合は、市販薬での対処ではなく医療機関の受診を優先してください。

  1. 症状が1週間以上続いている
  2. 市販薬を使っても症状が改善しない
  3. 発熱が38.5℃以上で続いている
  4. 息苦しさや胸の痛みがある
  5. 急激な体重増加やむくみがある
  6. 尿の量が極端に減った

まとめ

高齢者が市販薬を使用する際は、腎機能や認知機能への影響を十分に理解した上で、慎重に選択することが大切です。特にNSAIDs系の解熱鎮痛薬や、抗コリン作用を持つ抗ヒスタミン薬には注意が必要です。

「市販薬だから安全」という思い込みを捨て、添付文書をよく読み、わからないことは薬剤師に相談する習慣をつけましょう。また、症状が長引く場合は自己判断で市販薬を使い続けず、医療機関を受診することが重要です。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療行為や診断の代替となるものではありません。具体的な症状や治療については、必ず医師または薬剤師にご相談ください。


出典:

  • 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」
  • 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編:療養環境別)」
  • 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「一般用医薬品の添付文書情報」
  • 消費者庁「高齢者の誤飲・誤食事故に関する注意喚起」